「家を売ってくれませんか?」と「賃借人から」申し出があった。
「売却する場合、何をどうすれば良いですか?」というJRSへの相談実例です。
具体的な相談内容としては
①価格はどのように決めたらよいのか?
②売買契約や名義変更の進め方は? でした。
通常、このような相談を仲介業者が受けた場合、
「その売買を仲介(媒介)できるのかどうか?」 で行動を決めるのでしょうが、
弊社JRSの場合、まずは、
「売却することが本当に貴方にとって得ですか?」 の確認からスタートします。
ご相談の物件は、23区内の一戸建で、土地・建物とも40年以上所有されています。
10年ほど前から賃貸している物件で、賃貸借契約は「定期借家契約」です。
その賃借人から「購入したい」というオファーがあったようです
「売却することが得かどうか?」を考えるためには「売却可能価格(=査定)」が必要です。
幸い、ごく近隣エリアで数件の取引事例(成約事例)がありましたので、
取引事例比較法により、土地価格を3000~3300万円と査定しました。
建物は築後40年以上経っていますので、買主が建物をどう評価するかで決まりますが、
-150~+150万円というレベルなので、ひとまず0円としました。
従いまして、土地・建物の査定価格としては3000~3300万円です。
所有期間が長く長期譲渡になりますので、譲渡税率は約20%。
昔の土地購入の領収書(500万円)があるようなので、売却時に測量費も仲介手数料も不要なら、
譲渡益は 約2500~2800万円 ⇒ 譲渡税は約500~560万円 となります。
以上は、買主を賃借人と決めて算出した査定額ではなく、
空き家として通常の売却活動をした場合の査定額です。
本ケースでは、この査定額を基準に「賃借人から提示される購入希望額」と比較することになります。
ここでとても重要なのは、今回の賃貸借が「定期借家契約」というところです。
もし旧来の一般的な「普通賃貸借契約」であった場合、「立ち退きについて」で書きました通り、
空き家にして売却するため、賃借人に退去してもらうのは難しいことが多いので、
同じ物件でありながら「賃借人付で売却する価格」と比較することなり、本ケースではかなり低い価格になります。
現在の年間賃料収入から、収益不動産の価格を決める収益還元法で試算すると、2000万円位まで査定額が落ちます。
幸いなのは、今回の賃貸借が定期借家契約であり、数年後には賃貸借契約が終了することです。
これは、いくら賃借人が「このまま住み続けたい!」と言っても、賃貸人が「No」と言えば、退去は確定的なのです。
従いまして、今回のご相談の場合、賃借人が希望する購入価格にOKを出すかどうかは、
「空き家として売却する場合の査定額(3000~3300万円)」との比較をすれば良いことになります。
もしこの査定額まで賃借人の購入価格が届かない場合は、数年後、定期借家契約が終了し、
空き家になってから売却活動をすれば良いからです。
くどいようですが、もし「普通賃貸借契約」の賃借人から「購入したい!」と言われたとき、
懐事情により賃貸人が積極的に売却したいと考えた場合には、本ケースで言えば、
収益還元法で査定された2000万円という査定額が比較基準となります。
今回の相談者は、生活に困っていることもなく、今、売却する特段の理由はありませんでした。
また、23区内で土地価格3000~3300万円という物件は、将来的に価格が上昇することはあっても、
暴落することはほぼないと考えられます。
需要層がとても厚い価格帯なので、この価格帯は安定していると考えられます。
従いまして、賃借人から購入希望額をヒアリングし、それが十分に満足できる数字でなければ、
今は売却せず、このまま月々の賃料収入をもらっていた方が良いかもしれない・・
そんな選択肢もあるということを知っていただくことが大事なのです。
そのため、「売却、まず誰に相談する?」で書きました通り、早めのご相談が大事なのです。
長くなりました
②売買契約や名義変更の進め方は? についてはまた改めて書きます。