その2 では、成年後見人の申請をする際、「診断書」と「本人情報シート」の重要性について書きます。
「要介護1」での後見人申請は受理されるのか?
本人の意思・判断能力が完璧でもなく最悪でもないグレーな状態において、お金を自己管理できていないことが理解できず、身内や第三者にお金の管理を任せることを断固拒否するケースがあると思います。
本人の介護度が要支援1・2や要介護1の場合に多いのではないかと思います。
かといって現状を放置することは、本人が悪意のある第三者を妄信し、気が付いたら本人の預金から何からすべて引き出されてしまう危険に晒されることになります。
そんな状態のとき、
「我々身内でなくても良いから、法的に誰かが本人の資産を管理してほしい!」
そう思うに至ることがあります。
そして、何としてでも後見人申請を受理させる最善策を考えるようになります。
「診断書」と「本人情報シート」が最も重要
後見人の申請は、預貯金・有価証券・固定資産など、本人の財産目録を作成したり、年金等の現在の収入と、実際の生活費等の支出に関する書類を作成したり、かなり大変な作業です。
そんな大変な作業の中、特に要支援1・2や要介護1のレベルで後見人申請を受理してもらうためには、
「診断書」 「本人情報シート」
この2つの書類の記載内容がとても重要です!
「診断書」は、一般的には「かかりつけ医師」が作成します。
「本人情報シート」は、一般的には「ケアマネージャー」が作成します。
従いまして、医師とケアマネージャーの記載内容如何で、後見人申請の受理・不受理が大きく左右されます。
誤解される恐れがありますが、わかりやすく言えば、
「一見してごく普通に生活できているが、お金の管理だけはまったくできていない」
そんな人を、
「ああ、この人は、後見人制度によって資産を守ってあげなければいけない!」
家庭裁判所がそう判断せざるを得ない「診断書」と「本人情報シート」になっている必要があります。
「医師」も「ケアマネージャー」も「嘘は書けない!」
後見人申請を何とか受理してもらおうと、医師やケアマネージャーに無理なお願いをしても、彼らも責任ある立場で書類を作成する以上、「嘘」を書くことはできません。
医師としては、「長谷川式認知症スケール」にしても「MMSE」にしても、診断結果をそのまま記載すべきですし、ケアマネージャーも同じです。
では、申請者(一般的には本人の身内)としては何もできないのか?
医師・ケアマネージャーに過去の素行を書面で渡す
いくら、かかりつけ医師やケアマネージャーであっても、本人の素行を一番よく知っているのは身内です。
身内としては、家庭裁判所よりも前に、まずは「医師」と「ケアマネージャー」に、「この人、後見人制度で守ってあげないと大変なことになります!」ということを理解してもらうことが大切です。
・半年ほど前、オレオレ詐欺に遭い、幸い未遂だったが、現金300万円を持参して詐欺師の指定場所まで出かけた
・2週間前に渡した生活資金20万円がなくなっており、使用用途を聞いてもわからなかった
・ここ1年ほど預金の引き出しを身内ではない〇〇さんに依頼しているが、引き出したお金の使用用途を聞いてもわからない
・複数のキャッシュカードの暗証番号をすべて〇〇さんに教えてしまっている
・怪しい投資話に乗ったのか、海外からの投資詐欺のような封書が頻繁に送られてくる
・インターネットを利用しないのに、訪問営業で電話回線をネット系業者に切り替えてしまった
・1分前に話していた内容、何について話していたかを思い出せない
・身内が通帳・印鑑・キャッシュカードを管理するようになったが、〇〇さんに誘導されたのか、老人施設の住所地に住民票を移転した上で通帳を再発行。新通帳が到着後、〇〇さんが単独で金融機関に現れ、定期預金の解約をしようとした。
とにかく思い出せる限りの出来事を列記して、医師・ケアマネージャーに渡すことをお薦めします。
「後見人候補者」は、身内以外が受理されやすい?
個人的な推測ですが、「家庭裁判所は身内だからといって決して信用しない」と思っています。
後見人制度は「本人の資産を守るための制度」ですから、
「後見人候補者を身内として申請」した場合、家庭裁判所としては、
「身内が勝手に本人の資産を使ってしまう恐れはないだろうか?」
当然、そんな意識を働かせて後見人を選定するものと思っています。
特に、お金の管理に関して、本人と身内が険悪な関係になってしまっているような場合など、家庭裁判所が本人と面談したときに、本人から「身内が後見人になること」を猛反対されることが予想されます。
そんなことも念頭に置き、後見開始申立書の記入時において、後見人候補者の記入欄では、
□申立人
とはせず、
□家庭裁判所に一任 あるいは、
□申立人以外の下記人物
のどちらかを選択しておくと、上記のような家庭裁判所の懸念は回避できると思います。