「三為(さんため)契約」とは?
※本ブログは弊社の事例をもとに作成されています
「三為(さんため)契約」とは、「第三者のためにする契約」を略したものです。
三為業者と呼ばれる不動産業者Xは、最終的には買主Bさんへ不動産を売却する目的で、前もって売主Aさんと売買契約(三為契約)を締結して購入、その後すかさず X社を売主・Bさんを買主 とする売買契約を締結します。
基本、不動産の即転売なので、不動産業者Xは転売利益を目的として三為契約をします。
通常、売主Aさんと不動産業者Xとの売買契約①、不動産業者Xと買主Bさんとの売買契約②、この2つの売買契約により、所有権移転登記は、売主Aさん⇒不動産業者X⇒買主Bさん へと順に登記されます。
しかし、三為契約の場合、「あくまでも買主Bさんのための契約」という意味合いから、不動産業者Xへの所有権移転を省略され、売主Aさんから買主Bさんへ「直接的に」所有権移転登記がなされます。
Bさんからご相談を受け、不動産の登記簿を確認した私は、
「Bさんは売主Aさんから直接、この不動産を購入した」 としか思えませんでした。
三為業者の所有権移転登記は省略されるため、登記簿に記録されないからです。
従いまして、Bさんの口から出る不動産業者Xは、ずっと「仲介者業者」だと思っていました。
後日、Bさんから購入当時の売買契約書を見せてもらうまでは・・・
仲介手数料 v.s. 三為取引による転売利益
例えば地方の物件で、下記のような事例が想定されます。
価格を1億円と設定し、売却情報を公開して売りに出されていた収益物件。
長期間、買主が現れないので、売主Aさんはかなり値段を下げないと・・と思っているところです。
三為業者Xはこの収益物件を首都圏に住むBさんに1億円で購入させる前提で画策します。
三為業者Xは、まず売主Aさん(側の仲介業者)と交渉し、8000万円で売却してもらう内諾を得ます。
三為業者Xが仲介の立場であるならば、売主をAさん、買主をBさんとして、売買価格1億ではなく8000万円の売買契約を締結すれば良く、Bさんから約250万円の仲介手数料を得れば良いのです。
※売主Aさんは売主側の仲介業者が存在するので、X社は売主Aさんからの手数料はもらえません
買主Bさんは、X社への仲介手数料(約250万円)が発生しますが、8000万円でこの収益物件を購入することができます。
三為業者Xが仲介ではなく転売(三為取引)をする場合、X社は三為契約を締結することで、この収益物件を8000万円で購入、ほぼ同時にBさんと売買契約を締結し、価格1億円でBさんに売却。
X社は2000万円の差額を得ます。
実際には売主Aさん側の仲介業者に約250万円の仲介手数料を支払いますが、それでも1750万円の粗利益を得ます。
三為取引におけるX社は、所有権移転登記が省略できるため、移転登記費用も不要です。
整理します
X社が仲介した場合の粗利益 250万円
X社が三為取引した場合の粗利益 1750万円
三為業者Xのインモラル
私が相談を受けたBさんは、この三為契約で、地方の収益不動産を3物件も購入していました。
売主はすべて別人ですが、3物件とも三為業者Xが売主となる売買契約を締結し、購入していました。
また、3物件すべて融資を受けての購入でしたが、なぜか、すべて同じ銀行からの融資でした。
どう見ても、三為業者Xと融資銀行が結託し、Bさんをカモにしているとしか思えない状況でした。
Bさんはとても善良な方ですが、不動産の購入に関しては、誰にも相談しなかったようです。
正確には「身近に相談する人がいなかった」と言われました。
もしBさんが少しでも不動産に明るい人に事前相談をしていたら・・
①購入しようとしている収益物件の売主はX社ではなく、Aさんであること。
②その収益不動産は1億で売り出されているが、長期間売れていないこと。
少なくともこの2点はすぐに調べられます。
ここまでわかれば、
「なぜX社が売主となって私に売却するのか?」
という疑問が発生し、もっと不動産に詳しい専門家に相談したはずです。
一方、Bさんが8000万円で購入できるにもかかわらず、三為取引を画策して1億で購入させた「X社のモラル」については大きな疑問と憤りを抱きます。
ここは説明が難しいところですが、X社が「1億で購入するBさんという存在」がない状態で、通常の売買契約で8000万円で購入していたのであれば、インモラルとは思いません。
不動産の「転売」とは、「いずれ〇〇万円で売れるであろうと目論んで△△万円で仕入れる」ものです。
つまり、「〇〇万円で売れなかったら赤字だ!」というリスクを背負って購入(仕入)するのです。
この世のすべての三為契約が該当するとは思いませんが、本ブログでいう三為契約は、「8000万円で売却してくれる売主」と「1億で購入してくれる買主」が正に存在する状況において、なんのリスクも負わずに即転売することです。
更に、転売したという履歴も登記簿には記載されず、買主の(もっと安く買えるという)利益を踏みにじったうえで自社の利益を追求するものです。
大事な確認 「この売物件の現所有者は誰?」
不動産の購入を考えている方
不動産業者から紹介される物件すべてについて確認する必要はありません
「あ、この物件いいなぁ 買おうかなぁ・・」
そう思った時、「その不動産の現所有者」を調べてください。
一般の方が自分で調べるのは少し大変なので、その物件を紹介した不動産業者に対して、
「この物件、興味がありますので、登記簿で現所有者を確認させてください」
とお願いしてください。
あるいは少し費用はかかりますが、司法書士・弁護士に依頼しても良いです。
他の不動産業者に調査を依頼することは、基本、やめたほうが良いと思います。
その物件を紹介してくれた不動産業者に対して、失礼な行為になると思うからです。
三為契約はダメ! というつもりはありません。
重々ご注意ください! ということです。